荒金大琳の1989年
龍谷大学「李柏文書」を見学
愛とロマンの書道
書道では出来上がった作品同様、書道家の基本理念も重要である。私のモットーは「愛とロマン」である。
「ロマン」とは新しいことにチャレンジしていくという冒険心である。書の心構えとして、私は次の4つをあげる。(1)愛 (2)喜び (3)怒り (4)悲しみ。この4つを表現するに当たっては、「氣」が入っていることが不可欠の条件となる。東洋思想の根幹をなす「氣」はここでは宇宙観、生命感を伴った気迫を意味し、気が入っていることによって、作家の真のメッセージが見る者に伝わり、その心を打ち、またとらえられることになる。
書道作品は紙の表面に単に墨がのっているのみにとられがちだが、実は作家の気迫でメッセージが紙の中に刻みこまれているということも注意して見てほしい。そうすれば作者の意図もおのずから分かるはずである。
次にテーマについては時間的普遍性についてうったえる。又、これから書道を目指す人には空間的普遍性についても言いたい。書を学ぶにおいては、古来からの書をまねることも確かに書道の重要な領域であるが、それとともに現代の社会に生きる書を目指すことが必要である。そしてそのなかで未来への夢を書作品に託すことは大切なことである。また、書道を中国日本を中心とする東洋のものというふうに限定する必要はまったくない。英語でもドイツ語でもよい。文字も中国の漢字や日本の仮名に限ることもない。ローマ字でもロシア文字でもアラビア文字でもよい。絵画が万国共通なように書もそうである。たとえ言葉が通じなくても、「氣」をもって書かれた作品なら見る人に訴えかけるものがわかるのである。 (荒金大琳)
(以上、「書の道」平成元年六月号 121号2ページ掲載の文章です。)
